開業医として独立を目指す際、医療技術や理想の診療スタイルを追求できる一方で、勤務医時代には想像しなかった様々なリスクに直面することになります。こうしたリスクを正しく理解し、適切なリスクマネジメントを実践することが、クリニックを安定して経営する鍵です。
本記事では、開業医が特に注意すべき4つのリスクと、その失敗を未然に防ぐための具体的なリスクマネジメントの方法について解説します。
開業医が直面する4つのリスク
はじめに、開業医が直面する4つのリスクについてみていきましょう。
休診時のリスク
開業医が最も直面しやすいリスクの一つが、病気やケガ、家庭の事情などで診療を継続できなくなる休診時のリスクです。
勤務医の場合、病院のスタッフが代診を行ったり、傷病手当金などの公的な保障制度によって一定期間の収入が補償されることが一般的です。しかし、開業医は国民健康保険に加入しているため、こうした手当金の対象外となり、休診期間中の収入が途絶えてしまいます。
そして、クリニックの家賃や医療機器のリース代、スタッフの給与、さらには生活費や開業資金の返済など、毎月発生する固定費の支払いは続きます。長期にわたる休診となれば、患者様が離れてしまうリスクもあります。さらに、預貯金や運転資金が枯渇し、事業の継続自体が困難になるケースも少なくありません。
災害時のリスク
地震、水害、火災などの自然災害により診療所が被害を受けるリスクも、開業医にとって脅威です。建物の損壊、医療機器の故障、電子カルテシステムの障害など、災害による被害は多岐にわたります。
診療が停止している間も固定費の支払いは続き、さらに復旧のための追加費用も必要となります。高額な医療機器が故障した場合、修理や買い替えに多額の費用がかかることもあり、経営への負担は計り知れません。
こうしたリスクを最小限に抑えるためには、事前に地域の災害リスクを把握し、事業継続計画(BCP)を策定しておくことが不可欠です。
医療事故・訴訟のリスク
医療行為には常に医療事故のリスクが伴いますが、開業医の場合、その責任をすべて自身で負うことになります。勤務医であれば病院が組織として対応しますが、開業医は訴訟対応から賠償責任まで、すべてを個人で対処しなければなりません。
医療訴訟に発展した場合、賠償金の支払いだけでなく、弁護士費用や訴訟対応による診療時間の減少も大きな負担となります。さらに、風評被害による患者離れも深刻な問題となる可能性があるため、経営への影響は多方面に及ぶでしょう。
医療訴訟の多くは、診療内容そのものよりも患者様の不信感や説明不足から発生しているケースが多いため、患者様の話しに耳を傾け、診療方針や治療内容、予想されるリスクについても具体的に伝えることが求められます。
事業失敗のリスク
開業医は医師であると同時に経営者でもあるため、様々な経営リスクに直面することになります。
帝国データバンクの調査によると、2024年の医療機関の倒産件数は64件、休廃業・解散件数は722件となり、ともに過去最多を更新しました。背景としては施設・サービス面を考慮した受診者の選別意識の高まりやコロナ関連補助金の削減、材料費・人件費の増大、コロナ関連融資の返済開始などが挙げられており、スタッフが定着せずサービス品質が低下した結果、施設・サービス面を重視する患者様が離れ、さらなる収入減少を招く悪循環に陥ると指摘しています。
このような失敗を避けるためには、医療サービスの質向上だけでなく、経営管理やマーケティング、資金計画など幅広い知識と準備が不可欠です。
参考:医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]
開業医に必要なリスクマネジメント
リスクを完全に排除することは不可能ですが、適切な対策を講じることでリスクを最小限に抑えることは可能です。ここでは、開業医が実践すべき具体的なリスクマネジメントの方法について解説していきます。
万が一に備えて保険に加入する
開業医にとって保険は重要なリスクヘッジ手段です。以下、開業医が検討すべき主な保険を表にまとめました。
保険の種類 | 補償内容 |
生命保険 | 死亡時の家族の生活保障、借入金返済 |
医師賠償責任保険 | 医療事故による損害賠償請求への対応 |
所得補償保険 | 病気・けがによる就業不能時の所得補償 |
火災保険 | 火災や自然災害、盗難などによる建物・設備・家財の損害補償 |
動産総合保険 | 医療機器の故障・損害の補償 |
施設賠償責任保険 | 施設の管理不備による第三者への損害補償 |
保険選びの際は、複数の保険会社の商品を比較検討し、自院の状況に最適な組み合わせを選択することが大切です。また、定期的に保険内容を見直し、経営状況の変化に応じて適切に調整していくことも、長期的なリスク管理には欠かせません。
院長不在時でも診療が継続できる仕組みを構築する
院長が急な病気や事故、家庭の事情などで不在となった場合でも、クリニックが機能し続ける体制づくりは極めて重要です。
まず、院長不在時の対応をマニュアル化し、スタッフ全員と共有することが基本となります。患者様への連絡方法や近隣医療機関への案内、必要な行政手続きなどを明文化しておくことで、緊急時にも混乱を最小限に抑えられます。
さらに、非常勤医師や代診医師を確保できるネットワークを構築しておくことも有効です。事前に医師会や近隣クリニックと連携し、いざという時に代診を依頼できる体制を整えておけば、患者の診療が途切れるリスクを減らせます。
開業コンサルタントを活用する
信頼できる開業コンサルタントを活用することで、リスクを回避しながら効率的な開業準備と経営改善が可能になります。コンサルタントは豊富な経験と専門知識を持ち、多くの成功事例と失敗事例を把握しているため、貴重な助言者となるでしょう。
開業準備段階では、立地選定、資金計画、スタッフ採用など、様々な局面でコンサルタントの助言が役立ちます。特に診療圏調査や競合分析は専門的なノウハウが必要となるため、その道のプロからの支援を受けることで、より精度の高い判断が可能です。
ただし、コンサルタント選びは慎重に行う必要があります。以下の記事ではクリニック開業コンサルティングサービスの依頼内容や選び方について解説しています。
関連記事:クリニック開業コンサルティングとは?依頼のメリットやデメリット、選び方を解説
まとめ
開業医として安定したクリニック経営を実現するためには、休診や災害、医療事故・訴訟、事業失敗といった様々なリスクを正しく理解し、事前に備えることが不可欠です。
リスクマネジメントの徹底は、患者様やスタッフの安心と信頼を守り、長期的なクリニックの発展にも直結します。これから開業を検討されている方は、リスク対策を万全にし、理想のクリニックづくりを進めていきましょう。
またクリニック経営の成功には、内装デザインや空間設計も大きな役割を果たします。患者様が安心して通院でき、スタッフが働きやすいクリニックを実現するためには、医療施設の設計・施工に精通したパートナー選びが重要です。
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